ばっかすの部屋

趣味や関心ごとに関する身辺雑記をチラシの裏に書き散らす。 そんな隠れ家「ばっかすの部屋」

君子評変(A級外盤No.32,49)

今回も振り返りネタです。

このところ「別冊FMfan」のバックナンバーを読み返しているのですが、その第27号(1980年秋号)の「長岡鉄男の外盤ジャーナル」における、ご覧のレコードの紹介文に目が止まりました。

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No.32「モーツァルト/Fl&Hp協奏曲」(仏アプロシュ AP009)ですが、「音質だが、一聴してハッとするほどのものはない」「聴感上のレンジはそう広く感じられない」「音はきれいだが、低域は多少締まり不足、あまり迫力のない、ツヤのない音だ」と、まったく評価されていません。そして最後に「ブラスバンド(AP004)は全然ダメ」と、No.49「4つの軍隊行進曲」を一言で切り捨てています。

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一方、「外盤A級セレクション1」では、No.49(AP004)について「中小音量で聴いていると面白くもなんともない録音だが、生演奏と同じ音量まで上げると(一般の家庭、また市販スピーカーでは無理かな)それこそ生そっくりの素晴らしい音になる」と、評価が一変しています。

ここで思い当たるのが、同書冒頭の解説文です。「外盤選びのコツは無手勝流」の項で、「結局、Bクラスと判定されるレコードは正味10分間以下の試聴でお蔵入りとなる。(中略)しかし、また、中には、数年前にBクラス、Cクラスと判定したものを、ある日突然ひっぱり出してきて再試聴するということもある。そしてCクラスから一気にAクラスに昇格したというのもある。人間のやることだから判定に狂いの出ることもあるのだ」と説明されています。これはまさに、No.32,49を念頭に置いての記述だったのではないでしょうか。

No.49については、「続々 長岡鉄男のレコード漫談」(1987年11月初版)でも、「カッティングレベルも低いが、それだけにレンジは広く、ハードでドライで歪みが少なく、ゴーストがなく、おそるべきエネルギーを秘めている。ただし、大音量で聴かないと全然つまらん音だ」(p.249)と高評価となっています。この記事の初出を調べてみると「ステレオ」1985年12月号でしたので、「外盤A級セレクション1」(1984年7月初版)での紹介後ということになりますから、「漫談」で取り上げるために再試聴をした結果、高評価に変わった、というわけではないようです。

 

 ところで上記「別冊FMfan」No.27の表紙、イタリア・ピアジオ社のスクーター「ベスパ」のフロントキャリアに乗せられた、ヤマハのアンプA-7の写真となっていますが、ここはやはりヤマハ「メイト」に乗せて欲しかったところです。

ちなみにこの「別冊FMfan」No.27には、長岡先生による「最新国産アンプ22機種フルテスト」が掲載されていて、ヤマハA-7も取り上げられているのですが、「120Wを楽に出せることも事実であり、このアンプはそこまでパワーを上げていった時に、初めて真価を発揮し、同価格帯のアンプに大きな差をつけるということになるようである」と評されています。

長岡先生の元で、大音量での試聴の有無が評価を分けたレコードとアンプの一瞬の邂逅を、40年前の一冊に垣間見ることができました。