ばっかすの部屋

趣味や関心ごとに関する身辺雑記をチラシの裏に書き散らす。 そんな隠れ家「ばっかすの部屋」

出会い そして 別れ(A級外盤No.96)

チック・コリアが2月9日に亡くなったと報じられました。享年79歳。

というわけで、今回のA級外盤紹介シリーズは、少々順番を飛ばしてこちらを紹介することにいたしましょう。

No.96「ザ・ミーティング」

チック・コリアとフリードリヒ・グルダによる「2台ピアノのための即興演奏」のライブ録音です。

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「コロコロと、本当に玉を転がすような右手の動きのみごとさ」が、実に印象的な録音です。反面、左手の存在感はかなり希薄でもあります。

「このレコードの圧巻は実は客席である」「どこで誰が咳をしたか、くしゃみをしたか、笑ったか、手にとるようにわかるような、ありありと見えるような録音である」も、実に印象的ですが、「こんなにきれいにリアルに録音されている客席は知らない」という聴き方ができなければ、ただの客席ノイズの耳障りなレコードに過ぎません。特にこのご時世でこんな会場に身を置いていたら、音楽どころではないでしょう。

また、客席については「明確で細かい音像、3次元的な定位」ですが、肝心のピアノは「右寄りの1台のやや左にもう1台があるかな?」という曖昧な感じの定位で、聴き分けるのに苦労します。

「82年6月27日、ミュンヘン・ドイツ美術館コングレス・ホールでの”ピアノ・サマー”におけるライヴ録音」ですが、初夏にこれほど咳音が聞こえるというのは、変な病気が流行っていたのでしょうか?(長岡先生は"the German Museum"を「ドイツ美術館」と訳していますが、「ドイツ博物館」が正しいようです)

このレコードではデュオのみが収録されていますが、当日はグルダとコリアそれぞれのソロ演奏も行われていて、「ザ・ミーティング ミュンヘン・ライブ1982」というライブ・ビデオにはその全てが収められているようです。

 

このコンサートの3日前の6月24日に、やはり「ピアノ・サマー」の一環として行われた、コリアとニコラス・エコノムとの2台ピアノのライブ録音も残されています。

Chick Corea & Nicolas Economou On Two Pianos」(独 Grammophon 410 637-1)

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このレコードは、別冊FMfan No.41(1984年春号)の「外盤ジャーナル」で紹介されていますが、「前号で紹介したコリアとグルダの録音より1カ月早い」とあります。

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で、別冊FMfan No.40(1983年冬号)の「外盤ジャーナル」を見ると、「ザ・ミーティング」を「八十二年七月二十七日、ミュンヘン、ドイツ博物館のコングレス・ホールで行われた「ピアノ・サマー」のライブ録音」と紹介しています。会場は正しく「博物館」となっていますが、日付表記の"June"を"July"と勘違いされたようです。

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また、「コリアのソロが二曲」とありますが、全曲エコノムとのデュオです。ジャケットの曲目リストに A-1「COREA & ECONOMOU」 B-1「BARTOK」 B-2,3「COREA」 B-4「COREA & ECONOMOU」と、「作曲家名」がクレジットされているのを見て、B-2,3を「コリアのソロ」と勘違いされたようです。

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2台ピアノの定位は、こちらの方がはっきりしています。またB-1,2,3では譜面をめくる音が左右にリアルに定位します。"Improvisation"(即興演奏)のA-1とB-4ではこの音が聞こえません。

ピアノの音は、左手の力強さは「ザ・ミーティング」より感じられますが、全体的に細身で、綺麗な録音ではありますが、際立った特徴はありません。あと、ピアノの強打で音が割れる部分がありますが、これは手持ちのレコードの盤質のせいかもしれません。

驚いたことに、このライブの模様がYouTubeで公開されていました。

youtu.be

 内部奏法の様子なども伺えて、やはりこういったライブは映像付きで楽しみたいと感じます。

 

エコノムは自動車事故のため1993年に40歳で亡くなったそうです。

エコノム(1953-93)、グルダ(1930-2000)そしてコリア(1941-2021)、、、奇しくも年齢の節目となる年に亡くなった3人となりましたが、天国でもセッションを繰り広げているでしょうか?

謹んでご冥福をお祈りいたします。