No.76「シリウス」の試聴まで進んだのを機に、「外盤A級セレクション」第1巻の三大「波形が見えるディスク」、No.18「力と栄光」、No.47「1812年」、No.76「シリウス」を振り返ってみましょう。
それぞれに対する長岡先生の描写は、次のようになっています。
No.18「低域のレベルが中域より高く、20Hzでも中域より高い。おそらく16Hz、10Hzでもある程度のレベルを保っているのだろう」「家鳴振動、ボリュームを上げると、スピーカーか部屋かどっちかがこわれる。また10〜20Hzの超低域でアームが共振して踊り出すおそれもある」
No.47「強烈な衝撃波はカートリッジ、アーム、スピーカーを強襲してガタガタにゆさぶる。スペアナでは20Hzまでしか見れないが、更に超低域までのびているはずだ」
No.76「盤面を見ただけでぞっとする。波形が目に見えるのである。超低域猛烈ハイレベルカッティング、20Hz、25Hzのレベルは恐らく前代未聞、アームは振り回されるし、ウーファーは吹っとぶし、地震のような騒ぎで、超低域に弱い人はめまいや吐き気を催す」「(ボリュームを)上げすぎるとスピーカーか、部屋か、人間か、どれかがこわれる」
これらの文章を見ると、No.76が一番凄そうですが、私の環境では、
No.18:アームが共振してトレース困難。スピーカーユニット(FE108ESII)が大きくバタつくため、ボリュームも上げられない。
No.47:衝撃波で針飛び発生。下手にボリュームを上げると間違いなくユニットが壊れる。
No.76:トレースは問題なし。ボリュームを多少上げてもユニットが壊れそうな振れにはならない。
といった感じで、No.76が比較的おとなしめな印象です。超メジャーレーベルであるドイツ・グラモフォンとしては、トレース困難なレコードを発売するわけにはいかず、カッティングレベルも常識の範囲での最大値に納めてある、ということでしょうか。
農業革命のように、緩やかながら大きな変動をもたらす第一の波。産業革命のように、爆発的に大きな変動をもたらす第二の波。情報革命のように、計算と管理の元に大きな変動をもたらす第三の波。トフラーは、オーディオの世界をも予言していたようです。
いずれにせよ、部屋や人より先にスピーカーが壊れてしまうような10cm一発では、これらのレコードの本当の恐ろしさを知ることはできないわけですが。