1月28日に紹介した、A級外盤No.87「ソロ」(℗1979)は、ECMレーベルにおけるジスモンチ3枚目のアルバムでした。その前年に発表された2枚目のアルバムがこちらになります。
「SOL DO MEIO DIA」(独ECM 1116)
長岡先生は「ソロ」のジャケットについて、「薄汚れたようなちゃちなジャケットに入っている」(「外盤ジャーナル」別冊FMfan No.24)と酷評しています。「外盤A級セレクション」第1巻の「外盤選びのコツは無手勝流」の項でも、「ジャケットはお粗末だが録音は超A級というものもある。ギスモンティのソロなんかがそうだ」と、わざわざあげつらう程でした。しかし「ソロ」のジャケットをよく見ると「楽器の写真をテープ貼りした方眼紙をテープ貼りした薄汚れたボール紙」の写真を、エンボス加工した白いボール紙に全面印刷するという、意外に手の込んだ作りであることがわかります。
一方「SOL DO MEIO DIA」のジャケットは、表面に雑物も混じる無漂白のボール紙そのものに印刷するという、長岡先生が見たら悶絶卒倒間違いなしの、正真正銘「薄汚れたちゃちなジャケット」です。
演奏はジスモンチの他、ナナ・ヴァスコンセロス、ラルフ・タウナー、コリン・ウォルコット、ヤン・ガルバレクが加わっています。1977年11月、「ソロ」と同じオスロのタレントスタジオでの録音。
「ソロ」と共通点の多い、リアルで鋭く、厚く、力強い録音ですが、特にA面で音場に不自然な点が目立ちます。
A-1の8弦ギター(ジスモンチ)と12弦ギター(タウナー)のデュエットは、オンマイクの巨大な8弦ギターの左脇で、オフマイクの12弦ギターが残響豊かに奏でられ、A-2では、8弦ギター(ジスモンチ)とマラカス(ヴァスコンセロス)とタブラ(ウォルコット)の音像が、全てセンターに重なるように定位します。A-3はジスモンチのカリンバ、笛、声と、ヴァスコンセロスのベリンバウ、打楽器が、それぞれ同時に聴こえる部分がありますので、明らかに多重録音です。音が良いだけに、音場の不自然さに違和感を覚えます。
そういった不自然さは、B面の方が軽減される感じで、表題曲のB-2「Sol Do Meio Dia(真昼の太陽)」において、全員が笛や声や空瓶を「ホーホー」と吹き鳴らす音が、ジャングルの鳥の声のようにリスニングルームに響き渡るところなどは、このアルバムの白眉といえるでしょう。
長岡先生はお持ちでなかったと思われますが、聴いていただきたかった、そしてジャケットを見ていただきたかった一枚といえるでしょう。