ばっかすの部屋

趣味や関心ごとに関する身辺雑記をチラシの裏に書き散らす。 そんな隠れ家「ばっかすの部屋」

後ろから前から(A級外盤No.72)

No.72「パーカッション」

9月27日に紹介したNo.70「パーカッション Vol.2」の前作にあたります。「外盤 A級セレクション」の第2、3巻は、レーベルのアルファベット順並びにレコード番号順に掲載されていますが、第1巻は、作曲者あるいは収録曲の年代順に掲載されているため、このような逆転が起こります。

ジャケットは、多数の打楽器が立ち並ぶ録音現場の、表は5X5=25枚のカラー写真、裏は6X6=36枚のモノクロ写真を、モザイク状に敷き詰めたデザインですが、ゴチャゴチャしてピンときません。

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このまま縮小してCDジャケットにしたら、何が何だかわからないものになるでしょう、、、と思って調べてみたら、さすがにCD(R32E-1018)では3X3=9枚のカラー写真で構成するデザインに変更されていました。

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A面とB面冒頭に収録されている、コンスタンの「14のスタシオン(苦難)」とは、キリストの受難を描く14枚の聖画像(イコン)「十字架の道行き」のことのようです。スイスに出張した時に訪れたいくつかの教会で、これらを目にしたことを思い出します。ジャケット写真もこれを意識したものかもしれません。

曲は1〜10曲目がA面、11〜14曲目がB面に、それぞれ切れ目なしで収められていますが、私の信心が欠如しているせいか、曲のどの部分が受難のどの場面に対応しているのか、表題音楽として全く把握できません(バッハの受難曲などは、それなりにわかった気になれるものですが)。

打楽器曲としても、リズム動機に基づくようなわかりやすいものではなく、構成と音響を鑑賞する類のようですが、個人的にはあまり出来のいいものとは思えません。グアルダの打楽器ソロと、Vn,Va,Vc,Hps,Tb,エレキギターからなるアンサンブルで演奏されますが、打楽器群にオーバーラップするように曖昧に定位するアンサンブル(恐らく別録り)は、打楽器にからんで思いつきのように登場しては消え、存在意義が感じられません(要するに邪魔)。

B面後半のシュトックハウゼン「ツィクルス」の方が、打楽器のみに集中できる分、聴きやすいとはいえますが、出来としては似たり寄ったりの感があります。

さて、肝心の録音ですが「特にハイエンドの研ぎすまされた鋭さは、かみそりの刃で切裂くというか、フェンシングの本身のサーベルで電光石火の突きを入れてくるというか、恐るべきスピード感を持っている」という片鱗は窺えますが、全容を明らかにするには私のシステムは修行が足りないようです。

「ギロの緊迫感」が、ギザギザの角がくたびれて丸まっているように聴こえるのを筆頭に、パルシブな音の立ち上がりやエッジが微妙に欠如してしまうナマクラ刀の切れ味には、2万円の中華プリアンプの限界を感じます。

それでも「A面後半の3つのシンバルが大活躍する部分は猛烈な情報量、パルスの連続でありながら見事に分離しており、再生は難しく、テストにも使える」といったあたりは、それなりにこなしていますから、捨てた物ではありません。

 

と、後ろ向きにも前向きにも考えさせられる1枚となりました。