「ANIMUS III」と「VALENTINE」という2つの作品を、「synapse→」(矢印はsynapseの下線として記されている)という経過部で連結するという構成です。
ジャケット裏のタイトルリストには、「ANIMUS III」はクラリネットとテープ、「synapse→ VALENTINE」はテープとコントラバスのための作品と記されていますが、「synapse→」がテープ(電子音楽)、「VALENTINE」がコントラバス、と分かれています。
長岡先生の評価は、「電子音楽といっても、最近のシンセサイザーとはちがって、極めて原始的な発振音が中心、それにクラリネットが加わってもたいしたことはない」(ANIMUS III)、「お粗末な電子音(音楽とはいえない)」(synapse→)とにべも無く、「VALENTINE」のみが「問題は後半のコントラバスのソロだ。これは凄い。コントラバスのレコードはたいてい持っているが、未だにこれを凌ぐものにはお目にかかっていない」と絶賛の対象となっています。
しかし私の環境では「強烈なピチカートでは、衝撃波がリスナーと部屋を強襲する。このレコードをかけると、メーカーの試聴室は至るところ共振してガタボロになる」といった事態には陥りません。原典のスペアナ写真は50Hzまでハイレベルで伸びていますが、40Hzまでフラットな私のスーパースワン21で、11時位までボリュームを上げてもコーンがばたついたりもせず、超低域までそれほど伸びてる様子がありません。ひょっとして、長岡先生所有ディスクとはマスターが違うのでしょうか?
個人的には「ANIMUS III」の終盤で、クラリネットとそれを変調した電子音が絡み合い、電子音が徐々に部屋中に広がり、頭上や背後から降り注いでくる部分が聴きどころと感じました。(C)1971とありますが、49年前にこれだけの電気的音場を実現できたというのは凄いことだと思います(ちなみに冨田勲「月の光」のリリースは1974年)。
「1枚の1/4しか役に立たない」という結論は一致したようです。