新年最初のA級外盤の紹介となりますが、その前にひとつ訂正を。No.83「鳥の歌」を紹介した12月30日の記事で、
「外盤A級セレクション」第1巻は、作曲者あるいは収録曲の年代順に掲載されています。これに従えば、このNo.83は、No.6「アラブ・アンダルシアの音楽」の次に紹介されて良いはずですが、なぜか吉田進(1947-)とブレヒト(1898-1956)の間に挟まれています。
としましたが、ブレヒトは曲ではなく歌詞の作者ですので、適切ではありませんでした。ただし、A面10曲目はベルトルト・ブレヒト自身の作曲ですし、他の曲を作曲しているパウル・デッサウ(1894-1979)ハンス・アイスラー(1898-1962)クルト・ヴァイル(1900-1950)ルドルフ・ヴァーグナー=レゲニー(1903-1962)等も、ブレヒトと同時代の作曲家ですので、大きな間違いとは言えない、、、と言い訳しておきます。
で、問題のNo.84「ブレヒト・ポートレート」です。未聴盤でしたが、ブレヒト作品の劇中歌集で、音楽としてはポピュラーに分類される内容でした。歌い手のSonja Kehler(1933-2016)もWikipediaで「ブレヒト作品の解釈で国際的に知られるドイツの女優兼シャンソン歌手」と紹介されています。
長岡先生は「デッドなスタジオでマイクは3本ぐらいか。ケーラーはセンターに傲然と定位」と記していますが、歌手はポピュラー的にマイクの前で歌っている感じです。伴奏も小編成のジャズバンドといったところでしょう。「伴奏はピアノ、ツィンバロン、ギター、フルート、パーカッションといったところか」とありますが、ツィンバロンやギターというのは、ホンキートンクピアノとコントラバスではないでしょうか。他にヴァイオリン、クラリネット、ピッコロ、トランペット、サクソフォンが加わっているようです。
いずれにせよ、クラシックとしても、ジャズやシャンソンとしても、A級といえるほど飛び抜けた録音とは思えませんでした。
手持ちの「Hanns Eisler Edition」(蘭 Brilliant Classics 9430)という10枚組CDセットの中に、"Gisela May singt Brecht"(ギゼラ・マイ、ブレヒトを歌う)という1枚があり、アイスラー作曲によるブレヒト劇中歌が13曲収められていて、No.84と同じ曲も2曲含まれています。
Gisela May(1924-2016)もブレヒト劇で国際的に知られるドイツの女優兼歌手ということですので、Sonja Kehlerの先輩格といったところでしょうか。伴奏はHenry Krtschil指揮によるStudio orchestraとあり、No.84と同じ雰囲気の録音です。1966年および1968年という古い録音ですが(No.84は℗1978)、No.84と同レベルの音質だと思います。
こちらを聴いた後でNo.84を聴くと上品な歌声に感じてしまいましたので、「黒いストッキングの年増女が地声でやけっぱちで歌っている」感は、Gisela May先輩に軍配が上がるようです。