ばっかすの部屋

趣味や関心ごとに関する身辺雑記をチラシの裏に書き散らす。 そんな隠れ家「ばっかすの部屋」

電気不死鳥の歌(A級外盤No.262,83)

No.262「コーレ・コルベルグ
No.83「鳥の歌」

11月22日以来のA級外盤ネタですが、「エレクトリック・フェニックス」つながりで、第3巻のNo.262に飛びます。ノルウェーの作曲家Kåre Kolberg(1936-2014)の作品集ですが、B面の「FOR THE TIME BEING」をエレクトリック・フェニックスが演奏している、ということで紹介することにしました(A面の「ARIA IN ARIA」は、第3巻の紹介時に改めて取り上げます)。

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「ダブル・ヴォーカル・カルテットのための作品で、エレクトリック・フェニックスに書かれ、捧げられた。フェニックスは4人しかいないので、2重録音でダブル・カルテットを実現している」と解説されています。長岡先生はエレクトリック・フェニックスのことを「男女2人ずつのヴォーカルにエンジニア(エレクトロニクス担当)を加えた5人のグループ」と誤解されているようですが、公式サイトの"Recordings by Electric Phoenix"というリストには、総勢28名の名前が挙げられていて、ディスクや曲によって異なる組み合わせのメンバーが登場する、というスタイルのグループです。

ともあれ「歌唱テクニックは最高、音もよく、音場もいい」のは、エレクトリック・フェニックスのディスク全てに共通しています。声を張り上げて叫ぶような場面でも、歪っぽくもヒステリックにもならないのは驚異的です。ただ「FOR THE TIME BEING」の録音は、8人で歌っているというより、4人が2つの声部を歌っている、という感じの定位です。同じマイクアレンジで録音したカルテットをそのまま重ね合わせたようですが、これは意図的なのかもしれません。

 

そして鳥つながりということで、第1巻のNo.83「鳥の歌」に戻ります。

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 フランス・ルネサンス期の作曲家ジャヌカン(1485-1558)の歌曲集です。

10月9日の記事で触れましたが、「外盤A級セレクション」第1巻は、作曲者あるいは収録曲の年代順に掲載されています。これに従えば、このNo.83は、No.6「アラブ・アンダルシアの音楽」の次に紹介されて良いはずですが、なぜか吉田進(1947-)とブレヒト(1898-1956)の間に挟まれています。年代順はNo.82の吉田進まで、No.87以降は民族音楽やポピュラー音楽系統、と読み取れますが、年代順で分類できるクラシック音楽で構成されているNo.83「鳥の歌」No.84「ブレヒトポートレート」No.85「ヴィルトーゾ・ハーモニカ」No.86「ハーモニカ」が、この立ち位置にあるのは「外盤A級セレクション」最大の謎といえます。

それはさておき「録音は超A級、声が力強く、鮮明で、透明で、艶がある。ウオームでソフトな艶ではなく、むしろクールでハードだが、深みのある高品位の艶だ」とある通りで、ある意味仏ハルモニア・ムンディらしからぬシャープな印象の録音です。エレクトリック・フェニックスを引き合いに「ヴォーカル・カルテット録音の双璧といってよい」と絶賛されていますが、この一文を引き出すためにNo.80「エレクトリック・フェニックス」の後に紹介したのでしょうか?

一部の曲にはリュートの伴奏が入りますが、これがとてつもなく影が薄く、注意しないと気づかないレベルです。「リュート・ソロはA面、B面中ほどに1曲ずつ息抜きの感じで入っており、なくもがなである」と紹介されていますが、両面を通して聴いた後にこの一文を読んで、「A面にリュート・ソロはなかったのでは?」と思ってしまうほど、存在感がありません。そういった点でも稀有な録音かもしれません。