波打ち際に大の字で仰向けに横たわる全裸の男の写真を、天地ひっくり返したジャケットがなかなか強烈ですが、解説に"Cover : Stockhausen takes off from SIRIUS"とあってビックリ。まさに体を張ったシュトックハウゼンの気合のほどが伺われます。
楽曲の詳細はこちらのサイトに詳しく解説されていますが、4機のUFOが相次いで着陸し、中から現れた4人のシリウス星人(トランペット、ソプラノ歌手、バスクラリネット、バス歌手)が自己紹介のあと様々なメッセージを伝え、再びUFOに乗って離陸していく、という構成の作品です。LP2枚組でトータル96分というのは、ライブパフォーマンスとして必要な長さなのでしょうが、耳で聴くだけの作品としては長すぎで、LP片面30分のダイジェストでも十二分な印象です。
さて録音ですが、肝心の「波形が目に見える」という第1面冒頭(着陸)と第4面後半(離陸)の「超低域ハイレベルカッティング」の部分は、「アームは振り回されるし、ウーファーは吹っとぶし、地震のような騒ぎで、超低域に弱い人はめまいや吐き気を催す」とおどされるほどの深刻な事態には、残念ながら(?)陥りませんでした。超低音の圧力は感じられますが、少なくともNo.18「力と栄光」やNo.47「1812年」ほどトレース困難な猛烈カッティングではありません。
一方「ソリストの自己紹介」の部分は、「オンマイクで鮮烈、エネルギッシュなサウンド」という通りで、力強いがヒステリックにはならず、思わず聴き惚れてしまいます。
こうしたサウンドはNo.74,75にも共通した特徴といえますが、カラヤン全盛時のハイ上がりで痩せギスでヒステリックなグラモフォンサウンド時代の中で、異彩を放つもので、シュトックハウゼンのセンスと調整能力の大きさが窺い知れます。
それにしても、セレクション100枚中3枚もグラモフォンのシュトックハウゼンに割いた長岡先生も、シリウス星の使徒だったのかもしれません。