ばっかすの部屋

趣味や関心ごとに関する身辺雑記をチラシの裏に書き散らす。 そんな隠れ家「ばっかすの部屋」

読み解く力(A級外盤No.35.36)

No.35.36「ベートーヴェンピアノソナタ

いずれもフォルテピアノによる演奏ですが、No.35のノンサッチ盤は復元楽器、No.36のアストレ盤はオリジナル楽器を使用しています。

現在のシステムは、No.36の厚みのある低音には向いていますが、No.35のスピード感のある低音は苦手のようで、A-2000の限界を感じます。

どちらもメカニカルノイズや付帯音を伴う独特のサウンドが魅力といえますが、コンサートホールで現代のフォルテピアノを聴く場合、このような音はほとんど聴こえません。

このため、「誇張した録音だ」と批判する声もあると思いますが、恐らく静かな部屋で楽器の近くで聴けば、これらの録音に近いサウンドが聴けるのではないでしょうか。

 

ところでNo.36の録音について、長岡先生は「唯一の欠点は第32番の第1楽章で、一瞬Rchの音が消える部分があること」と指摘しています。

確かに20小節目、1分37秒あたりで、一瞬音像が左チャンネル寄りにブレます。

ところが、2018年に復刻された「新 長岡鉄男の外盤A級セレクション」の付録SACDに収録された同音源(トラック11)でも、今年1月に発売された全集盤CD(CD9、トラック4)でも、そのような現象は見られません。

ということは、アナログ盤のマスタリング時のエラーなのでしょうか? それとも、上記SACDやCDの方がマスタリング時に補正をかけたのでしょうか?

 

ちなみにNo.36のLPジャケットや、2011年に発売されたXRCD限定盤全集BOXには、ベートーヴェンの自筆楽譜の写真が採用されています。

調べてみると、問題の第32番第1楽章の97〜104小節の部分とわかりましたが、この自筆楽譜をこのように読み解くには、ベートーヴェンの記譜法のクセ、音楽書法の特徴等を熟知した、相当な音楽的知識が必要なのは明らかです。

そして、レコードを聴きながら譜面を追ってみても、私のようなシロウトは時に演奏に目が追いつかなくなったりするわけですが、この楽譜からこのような音楽を読み解き、音にすることができ、時に深い感銘を与えてくれるピアニストの能力にも改めて感嘆してしまいます。

 

などと殊勝なことを言っていても、これからも実演やレコードを聴いては色々と難癖をつけ続けるのは明らかなのですが。