レコード芸術6月号の特集「私のベートーヴェン ー 百人百様の音盤体験」で、濱田滋郎さんが「レコード愛好歴70年におよぶ人間には、やはりそれらしい選択を許していただきたい」と記しています。1935年生まれということなので、15歳の頃からの盤歴ということになります。
「自分はどうだろう?」と振り返ってみると、1962年に三鷹市で生まれ、1965年に山梨県に転居、そして1970年に千代田区に転居するまでの幼少期は、ソノシートで童謡やTV番組主題歌に親しんだ記憶はありますが、盤歴にカウントするレベルではないでしょう。
千代田区に転居して間もない頃、親に連れられて秋葉原の石丸電気に行き、パイオニアの3点セット(プレーヤ、レシーバ、スピーカ)ステレオを購入したのに合わせ、ビクターファミリークラブというレコード通販システムで購入したクラシック名曲集(11枚組)を聴き始めたのが盤歴スタートと呼べると思います。時期は明確ではありませんが、1970年だとすれば今年で盤歴50年ということになります。
8歳、小学3年生からの盤歴となると、濱田さんの15歳より随分早いことになりますが、あちらは戦中・戦後の時期のお話でありますから、単純に比較するわけにはいきません。
そもそも戦前(1940年以前)からの盤歴を持つ日本人というのは、現在90歳以上ということになりますから、現役のレコード愛好家にはほとんどいないともいえそうです。
逆に現在20歳以下の人のほとんどは「盤歴」、すなわちディスクメディアで音楽に親しむ経歴を持たずに一生を過ごすのではないでしょうか。
そう考えると、歴史上「盤歴」を持つ日本人のほとんどは昭和生まれで、大正以前や平成以降生まれは少々、ということになりそうです。
「盤物流転」といったところでしょうか。