今回も、本日のタイトルに合わせてソフトを紹介、、、といっても、LPでもCDでもジャケットは四角だと言い出したら、何でもよくなってしまいますので「四角ピアノ」で行きましょう。
「バーチャル・ハイドン」(香港 NAXOS 8.501203)
ハイドンの鍵盤独奏曲全曲を、7種類の楽器、9種類のバーチャル空間で収録した、12CD(+1DVD)ボックスセットです。非常に手間暇のかかった労作といえる録音で、その凄さはこちらのブログで詳しく紹介されています。7種類の楽器の中に1877年製スクエア・ピアノの2007年製コピーが含まれていて、2箇所のバーチャル空間での演奏が、CD7,8,10に収められています。
肝心の録音は、残念ながらちょっと微妙と言わざるを得ません。楽器の音はクリアに録れていますが、肝心のバーチャル空間の音場感が感じられません。元の音源はBlu-ray Audio版(NAXOS NBD0001)の5.0chということなのですが、CDはそのうちのL,Rを取り出しただけなのでは? と疑いたくなってしまいます(付録のDVDを5.0chで再生した場合は、空間の違いがはっきりと聴きとれます)。
バーチャル空間というのは、
1)ハイドンに因む9箇所の歴史的空間(部屋、サロン、ホール)の音響特性を、
2)8本のマイクアレイを用いて3通りの高さ(2,3,4m)、計24ポイントで測定し、
3)それぞれの地点での反響音をシミュレートするプログラムを作成し、
4)無響室スタジオ内に、計測地点と同じ位置に24組のスピーカを配置し、
5)楽器の演奏音をオンマイクで捉え、
6)24地点での反響音をリアルタイムでシミュレートし、
7)24組のスピーカから出力することで、
8)9箇所の歴史的空間の音場をスタジオ内にバーチャルで再現する、
という、大変手間のかかったシステムです。
しかし、素人目には色々と疑問も湧いてきます。
1)スピーカー1組が4本の平面ユニットで構成されているが、点音源に近い小口径フルレンジ一発が適当ではないか?
2)演奏と同時にバーチャル反響音を再生するとハウリングが起こるため、録音時には反響音をスピーカからは流さず、奏者が装着したヘッドホンで再現しているようだが、奏者に違和感が生じていないか?
3)多数のスピーカに囲まれた、殺風景なスタジオで気分良く演奏できるのか?
4)楽器にクラックが生じるほどスタジオが乾燥していて、加湿器を使っても間に合わない、というシーンがDVDにあったが、楽器や奏者のコンディション的に問題はなかったのか?
5)無響室スタジオでの録音にも関わらず、空調か加湿器か何かの暗騒音が常時響いているのに気づかなかったのか?
実験としては非常に興味深く、意義もあるものだと思いますが、商品としてはリアル空間とバーチャル空間の聴き比べができるようなものであって欲しかったと思いました。