No.55「アイヴズ/コンコード・ソナタ」
これまで未聴だったレコードです。
「マイクはつかず離れず、蓋をあけて首を突っこむような録音ではないが、アタックは明快にキャッチされており、適度な力強さがあり、サロンで弾くピアノをわりと近くで聴く感じだ」とありますが、蓋に反射した音ではなく、ハンマーがピアノ線を叩く音が直接収録されているようにも感じられます。特に高音を強打した時の音に、ホールで聴くピアノでは味わえない伸びやかさがあります。
「ソローの最後に近くなって、ヴィオラ、次いでフルートが入る」とありますが、これは長岡先生の勘違いでしょう。第4楽章「ソロー」終盤に登場するのはフルートのみで、ヴィオラは第1楽章「エマーソン」終盤に入ります(知らずに聴いていたのでびっくりしました)。どちらも簡単なフレーズを数小節鳴らすのみ(特にヴィオラはごくわずか)ですので、共演を依頼するのは気が引けそうです。
偶然にも、最近amazonで購入したリュビモフのCDボックス(7枚組)のCD7に同じ曲が収録されていました。こちらはヴィオラは加わらない初版による演奏で、フルートはNo.55よりも影が薄く、注意していないと聴き逃してしまいそうです。ライブ録音なのですが、舞台裏で吹いているようにも感じられます。
No.55の紹介でヴィオラやフルートが「定位としてはピアノの向こうにいるのに、音がピアノに遮られる感じがないのが妙」とありますが、この辺を意識して特殊な収録をした可能性もありそうです。
なお、リュビモフの演奏では、全編を通して登場する「運命」の動機(ジャジャジャジャーン)が強く意識されますが、No.55のヘンクの演奏では控えめな感じで、比べると物足りなさを感じました。
ところでリュビモフのボックスのCD6には、ケージが2台ピアノ用に編曲したサティの「ソクラテス」が収録されています。7月11日の記事で紹介したNo.54に「ソクラテス」第3部の「ソクラテスの死」が収録されているのは、何かの因縁でしょうか!?